【レポート】 未来へのつながり:史上初・宇宙からの4Kライブストリーミングを実現させたテクノロジーとワークフロー #AWSSummit

【レポート】 未来へのつながり:史上初・宇宙からの4Kライブストリーミングを実現させたテクノロジーとワークフロー #AWSSummit

Clock Icon2017.06.07

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はじめに

清水です。2017/05/30(火)から6/2(金)の4日間の日程で行われていましたAWS Summit Tokyo 2017、Day2のAWS Techトラック3で行われたセッション「未来へのつながり:史上初・宇宙からの 4K ライブストリーミングを実現させたテクノロジーとワークフロー(D2T3-7)」を聴講してきので、そのセッションレポートになります。

スピーカーはKhawaja Shams 氏 (AWS Elemental エンジニアリング担当バイスプレジデント)です。

セッションの概要について公式ページから引用します。

2017 年 4 月 26 日午前 10 時 30 分(米国太平洋時間)、NASA は、遥か地上 450 キロにある国際宇宙ステーション(ISS)から、超高精細解像度の映像ストリームをリアルタイムで地球上の視聴者に届けるという、地球史上初めての実験を公の場で成功させました。鮮明な映像がリアルタイムで地上の研究班に届けられることで、より精確な調査が可能になり、また世界中で宇宙での出来事や実験内容を一緒に体験することができるようになります。本セッションでは、この NASA の成功を支えた、AWS と AWS Elemental のクラウド映像ソリューションについてご説明します(国内一般初公開)。

AWS Summit Tokyo 2017(2017年5月31日~6月2日) - AWS Summit Tokyo 2017|AWS

レポート

1969/7/21 人類がはじめて月面に降り立った

  • 歴史的瞬間はTVで映像として中継された
  • 映像はすごいブレているが、アームストロング船長が月面に着地した瞬間を捉えていた
  • 実際にこの映像をセッション中に上映
  • "一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ"
  • 動画(映像)として共有できたので、世界中が熱狂
  • 映像の画質はモノクロカメラ、10fps
  • それでも、40万キロ離れた場所の映像が届いた、宇宙とつながっている

国際宇宙ステーション(ISS)から4K映像を届ける

  • ISSは秒速7万キロで移動。1時間半で地球を1周する
  • これまでたくさんの宇宙飛行士が滞在した
    • 滞在した宇宙飛行士しか体験できないことがあるが、映像は共有したい
  • カメラテクノロジーを改善、宇宙ステーションからの映像を地球の人たちと共有する
    • 4k映像を宇宙からライブで送る、というミッション

4K映像を届けるということ

  • 月面に降り立ったアポロのときとは画面サイズが大幅に異なる
  • モノクロ/カラーの違いも
  • 4K映像
    • H.265/HEVCで圧縮
    • 元のビットレート 2982 Mbps
      • 圧縮して 18 Mbps
    • 3840 x 2160
    • 30FPS
    • 4:2:0
    • アポロの274倍
  • 世界中の多様なデバイスにリアルタイムで映像を届けたい

課題

エンコーダ

  • Elemental Liveのアプライアンスを宇宙に持っていきたいが…
  • 小ささ、消費電力、熱など、NASAからのリクエスト
  • 宇宙ステーションのラックに収める必要がある
    • ラックに収まる筐体を開発
  • その筐体にElementalソフトウェアをインストール
  • Elementalのアプライアンスではハードウェアエンコードだが、ソフトウェアエンコードに変更
  • 筐体は10ポンド、180ワットの消費電力

エンコーダの運搬方法

  • どのように宇宙に持っていくか
    • コウノトリ6号機を使用
    • 何のダメージもなく、宇宙ステーションに届いた

その他の機材

  • 4K撮影のためのカメラも必要
  • エンコーダとカメラの接続
    • クワッドソケット
    • 3G-SDIで束ねる
  • 宇宙ステーション内にはたくさんのワイヤーが…

帯域

  • ISSと地上との通信、トータルの帯域は18Mbps

テスト

  • 何回もテストを実施
  • 宇宙飛行士さんに協力してもらう

実際のワークフロー

  • ISSの4Kカメラからの映像をISSネットワーク経由でジョンソンスペースセンターに転送
    • ISSのElemental LiveでHEVC 4KビデオストリームにしてUDP転送
  • ジョンソンスペースセンターから衛星回線ならびに専用光ファイバーでNAB会場のラスベガスコンベンションセンターへ転送
    • NAB会場のAWS Elemental Liveへ。ここも4KビデオストリームをUDP転送
  • ラスベガスコンベンションセンターではElemental CEOとの生中継インタビューなどをあわせて、AWSに転送
    • 4K映像をHLS形式で
  • AWS上では Elemental Deltaでオンデマンドパッケージ
    • AWS Deltaは二重の冗長構成
      • オレゴン、カルフォルニアと別リージョンに。1000マイル離れている
    • Route53でDeepHealthチェックを実施
    • ライブエンコーダ、またはDeltaがダウンしたらRoute53機能で別系統に切り替え
    • シームレスなフェイルオーバー、人が介さず自動化されている
  • 配信はCloudFrontを利用
    • エッジキャッシュで全世界に配信
    • CloudWatchでモニタリング
  • Adaptive Bitrate(ABR)の利用
    • 4Kデバイスが無くてもABRで他のビットレート/解像度で表示
    • インターネット回線の不調で4Kの帯域がない場合もABRで対応
    • ABRの解像度/ビットレート
      • 426x240@528kbps (400k video + 128k AAC audio) - SD
      • 640x360@928kbps (800k video + 128k AAC audio) - SD
      • 960x540@1,628kbps (1,500k video + 128k AAC audio) - SD
      • 1280x720@3,628kbps (3,500k video + 128k AAC audio) - HD
      • 1920x1080@5,628kbps (5,500k video + 128k AAC audio) - HD
      • 2560x1440@12,128kbps (12,000k video + 128k AAC audio) - UHD
      • 3840x2160@18,128kbps (18,000k video + 128k AAC audio) - 4K

実際に4Kライブストリーミングされた映像を上映

  • 宇宙との交信のため、11秒間の時差が発生
    • ラスベガス側から質問しても、11秒間宇宙飛行士側は聞こえない
  • ISSからの映像で様々な実験を捉えることができ、共有することができる
  • 4K、超高精細。これまで誰も見たことがないような映像を、宇宙にいるのと同じように見ることができる
  • ISSでの幾つかの実験
    • 水のボールでのピンポン
    • 食品用着色料を水の中に入れ、色のついた水のボール
    • 水のフィルムに着色料をまぜ、模様を作成
    • 4Kだからこそ、詳細がクリアに見える!

NASAの火星探査の事例

  • AWSは10年来、NASAの火星探査プロジェクトを支援している
  • 火星探査機ローバーからの画像解析
    • AWSで保存、処理、解析されている
    • 民間科学者にも解放
    • ローバーのカメラは1Mピクセル、パノラマで5Mピクセル
    • EC2ならびにAmazon SWF(Simple Workflow Service)で処理
    • ローバーからは自撮り写真も送られてくる
      • 様々な方向の写真、複数(5,000枚ほど)の写真をとって、つなぎ合わせて解析

感想

先日のNAB Show 2017で行われた宇宙からの4Kライブストリーミング、私もリアルタイムで見ていましたが、こんな綺麗な映像が宇宙からリアルタイムに(11秒の時差はあれど)見れることに感動しました!今回のセッションではその裏側、AWSの構成から始まり宇宙に持っていった機材なども紹介され、非常に興味深かったです。特にエンコーダについてはElemental Liveのアプライアンスがそのまま持って行けず専用筐体を作る必要があったなど…、地上で行うとは別の試行錯誤があったのだろうと思いました。また映像を地球上で受けた後の動画配信部分については、非常に堅牢に作られていると思いました。このアーキテクチャ自体は宇宙からの配信にとどまらず、通常の(地上での)配信にも有効であると思います。

宇宙と聞くと遠いことのように思いあまり現実味がなかったのですが、AWSが今回の4K配信や火星探査プロジェクトで使用されていることで、クラウド(雲)の先には宇宙が広がっているんだということを実感しました。

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